私たちの目指すすまいづくりのあり方

誰しもが、自分にとっての「お気に入りの場所」を持っています。
それは自宅の個室だったり、職場の休憩室だったり、特定の喫茶店の特定の席だったり、眺めのよい公園のあずまやだったりします。
それでは、何故そこがお気に入りなのでしょうか?
落ち着くから、くつろげるから、興味深い観察ができるから、風景がきれいだから・・・、
つまるところ、「その場所ならではの何か」があるからですよね。
ほかの場所にはない、その場所特有の雰囲気や気配が存在しているはずです。
せっかくすまいをつくるのなら、そのすまい手にとっての「お気に入りの場所」となって欲しい、というのが私たちの住まいづくりに対する願いです。
だから私たちは、特有の雰囲気や気配をもつすまいづくりを目指します。
その為に私たちは、立地条件や周辺環境の特性を把握し、部屋の配列や視線の抜けにこだわり、開口部の位置や風通しについて十分な検討を行います。
規定の部屋数を確保するだけのとおり一辺倒な設計では実現できない、「しっくり」くるようなすまいづくりをお手伝いしたいのです。

怪しいぞ、4LDK住宅。

まず、部屋数で住宅の豊かさをはかることを疑ってみます。
3LDKや4LDKといったすまいの呼び方や考え方の背後には、「部屋が多いほど豊かである」という概念が見え隠れしています。
でも、本当にそうでしょうか?
皆の集まる部屋を大きくとれれば個室は要らない、という住まい手もいらっしゃいます。その日の気分でそれぞれが好きな場所で過ごす、となれば「個人が所有する個室」という考え方自体無用なものとなります。
逆にめいめいの個室を重視する住まい手もあるかもしれません。そうなると居間や食堂は些細なもので事足りるかもしれないでしょう。
すまいの形式には無限の可能性があると思うのです。
無用の既成概念に縛られる事程つまらないものはありません。部屋数が多いからといってお気に入りの場所になるとは限らないのですから。
全ての住まい手に万能な形式はあり得ないのです。部屋数+LDKに固執しないところから、私たちのすまいづくりが始まります。

SSが考える豊かさって?

以上のように考えると、既成の枠組みにこだわらないすまいづくりには、 
 まだまだ大きな可能性が秘められていると思うのです。
このような前提の上で、我々は現在、以下の項目を特に重視したいと
考えています。

・ 空間について

・ 「おく」なる場所:
私たちが何らかの建物をつくり、入口を設ければ、建物内には必ず入口に近い場所と遠い場所ができます。私たち日本人は、古くからこの入口から最も遠い場所(部屋)を「おく」と呼んできました。この場所はいつの時代でも、その住まい手にとってもっとも大切なものを納める場所でした。ある時代では家長しか入れない神聖な場所でしたし、別の時代では先祖をまつる特別な場所でした。「おく」なる場所を作ることは、すまいをつくる動機そのものであると考えて差し支えないように思います。我々はこの「おく」なる場所の再生を、住宅形式を考える上での核としたいと考えます。
「おく」なる場所をもたないすまいは何となく味気なく、しっくりこないように思えてならないからです。

・ 「おちつく」場所:例えば、あなたが誰もいないガラガラの喫茶店に行ったとします。どこでも好きな席にどうぞ、といわれたら、ほとんどの人は自分の好みの席を選ぶはずです。どんなに小さい喫茶店でも、「おちつく」席とそうは思えない席があるものです。私たちは、このことをとても重要だと思います。つまり、ある部屋を想定した場合、その部屋内の全ての場所を「おちつく」場所にすることは出来ず、その周辺に必ずおちつきそうのない場所が同時存在するのです。我々はこの「おちつく」場所とそうでない場所をいかに適宜配置するかについて慎重に考慮すべきではないかと考えます。

・ 「ひろい」場所:どうせすまいをつくるのだからなるべく「ひろく」感じるすまいをつくりたいと考えています。「ひろさ」は人間の感覚なので、必ずしも実面積に対応するとは限りません。例えば20畳の部屋、と聞けば広い部屋のように思えますが、仮に窓も照明も無ければ広いとは感じられないかもしれません。あるいは適当な採光があったとしても、体育館のような部屋を経由してその部屋に入ったら、狭いと感じるでしょう。逆もまたしかりで、実面積の少ないスペースもつくりかた次第で広く見せることが可能です。このために視線の抜けや光の取り方、天井の高さ、隣接する部屋との関係などを注意深く調整しながらすまいづくりをすすめるべきであると考えます。

・ 素材について

・ 素材には、それぞれ特徴があります。木にも、紙にも、鉄にも、樹脂にも、それぞれ良さがあると思います。それぞれの素材を素直に生かし、使用することで、ちぐはぐでない、「しっくり」くるすまいづくりが実現できると考えます。例えば、建具の表面を木の仕上げに見せるために印刷物を貼り付けるような仕上げ方は、するべきでないと思うのです。

・ 装飾について

・ 先ず、洋風/和風といった考え方を捨てます。この国に暮らす私達はたいていの場合、いろいろな文化の影響を複合的に受けて暮らしております。ですからその生活を受け入れる器(=すまい)が完全に洋風であったり和風であったりすると、ちぐはぐなものになってしまうと思うのです。そもそも和/洋という2項対立の図式が意味をなさない現代でありますから、なおさらです。住まい手が、自分の好みを付加できるようなすまいが理想であると考えます。そのためには、必然的に、装飾的な要素が排除された、単純で根元的なすまいのご提案に行き着くものと信じております。

ジャングルジム、つくります。

以上のことを実現すると我々の理想のすまいづくりに近づく事が出来ます。その理想型は、すまいとしての機能が無くても成立するような建物でありたいのです。ここは居間、ここは食堂、ここは主寝室、と決まってなくても、歩いたり、たたずんだり、寝ころんだりしで楽しめる建物。そう、子供の頃夢中で楽しんだジャングルジムみたいに、機能なんて無くても楽しめる構築物のような。



チーフデザイナー 蕪木 孝典

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